仕事の途中で後頭部がじわじわ重くなってきた。家事をしていたらこめかみがズキズキし始めた。「また今日も…」とため息をつきながら鎮痛剤を探す…
その繰り返しに疲れている方に、今回はお伝えしていきます。

頭痛の多くは、頭そのものではなく「首や肩の筋肉を包む膜」の硬さが引き金になっていることがあります。この膜をじんわりゆるめてあげると、頭痛の強さが和らぐことがあるんです。
今回ご紹介するのは、椅子に座ったまま・道具なしでできるツボ押しとストレッチです。職場でも、自宅のソファでも、今すぐ試せます。
なぜ頭が痛くなるの?首や肩からつながる「筋膜」の関係
筋肉の外側にある「薄い膜」が頭痛を作り出している
首や肩の筋肉そのものより、その筋肉を包んでいる「筋膜」という薄い膜が硬くなることが、慢性的な頭痛の大きな原因になっていることがあります。
筋膜とは、全身の筋肉・神経・血管を包みながら連続してつながっている薄い膜の総称です。健康な状態ではしなやかで水分を含んでおり、筋肉が滑らかに動けるよう潤滑しています。
ところが、長時間の同じ姿勢・歩行量の少ない生活・慢性的なストレスが続くと、この筋膜が乾いて硬くなり、隣り合う膜同士が癒着してしまいます。
首・肩の筋膜の硬さが、なぜ頭まで痛くするのか
首から後頭部にかけての筋膜は、頭皮の筋膜とつながっています。
首の後ろにある僧帽筋・頭板状筋・後頭下筋群(頭と首の境目にある深い筋肉)の筋膜が硬くなると、その緊張がつながった糸を引くように後頭部・こめかみ・目の奥へと波及します。これが「緊張型頭痛」と呼ばれる状態の発生源のひとつです。
また、筋膜が硬くなった部位には「トリガーポイント」と呼ばれる特定の点ができることがあります。後頭部の下あたりを押すと目の奥まで痛みが広がる経験がある方は、このトリガーポイントが関与している可能性があります。
車移動中心の生活が、筋膜を硬くする
自家用車での移動が多い生活では、体を大きく動かす機会が自然と減ります。
特に運転中は、両腕がハンドルに固定されて胸の前側の筋肉が縮こまりやすくなります。この状態が続くと、肩が内側に巻き込まれ(巻き肩)、首の後ろの筋膜が引き伸ばされたまま固定されてしまいます。
乾いたスポンジが水を含めなくなるように、動かない筋膜は少しずつ硬くなっていきます。そしてその硬さが、頭痛として現れてくるのです。
なぜ強く揉むと翌日に悪化することがあるのか
筋膜に強い刺激が加わると、筋肉は防御反射として「これ以上圧迫されないよう収縮する」という反応を起こすことがあります。
揉んだ直後は血流が増えて楽になる感覚がありますが、その後に防御的な収縮が起きて、翌日以降に元以上に硬くなって戻ることがあります。筋膜には「強く伸ばす・強く押し込む」より「じんわり・ゆっくり」の刺激の方が緩みやすい特性があります。
職場やご自宅で10秒!痛みをスッとおさめるプロのツボとストレッチ
ツボ①「風池(ふうち)」——後頭部の緊張を一気にゆるめる
ツボの見つけ方:後頭部の下、耳の後ろから指2本分内側に入ったくぼみです。後頭部の髪の生え際を指で探ると、左右にくぼみが見つかります。
手順:
- 両手の親指を左右の風池に当てます
- 頭の重さを親指に少しだけ乗せるようにして、5秒かけてゆっくり押します
- 5秒かけてゆっくり離します
- これを5〜8回繰り返します
「気持ちいい」と感じる程度の力で十分です。後頭部にじんわりした温かさが広がってきたら、血流が改善されているサインです。
ツボ②「百会(ひゃくえ)」——頭全体の重さをゆるめる
ツボの見つけ方:頭頂部の中央、両耳を結んだ線と鼻から頭頂に向かう線が交わる点です。
手順:
- 中指を重ねて頭頂部に当てます
- 頭皮をゆっくり小さな円を描くようにマッサージします(強く押し込まず、頭皮を動かすイメージで)
- 10〜15秒続けます
頭の中がじんわりするような感覚が出てきたら、副交感神経が優位になってきているサインです。
ツボ③「合谷(ごうこく)」——机に置いたままできる痛み緩和
ツボの見つけ方:手の甲側、親指と人差し指の間のくぼみです。
手順:
- 反対の手の親指で合谷のくぼみを押し当てます
- 5秒押して・5秒離す動作を5回繰り返します
デスクワーク中でも机に手を置いたまま押せるため、職場でも周りの目を気にせず行えます。
ストレッチ①「胸椎リセット呼吸」——首への負荷を根元から減らす
首の筋膜のトリガーポイントをケアする前に、首の後ろの筋膜を過剰に引っ張っている「胸の丸まり」を解消します。
手順:
- 椅子に浅く腰かけ、背もたれから少し背中を離します
- 両手を後頭部でゆるく組み、肘を左右に広げます
- 鼻から4秒かけてゆっくり吸いながら、胸を天井に向けて開くように上体をわずかに後傾させます
- 肩甲骨が背骨に向かって近づく感覚を確認します
- 口から6〜8秒かけてゆっくり吐きながら姿勢を戻します
- これを5〜8回繰り返します
「腰から反る」ではなく「胸から開く」ことがポイントです。胸が開いてくると、頭が自然と体の真上に戻り、首の筋膜への余分な引っ張りが減っていきます。
ストレッチ②「後頭部ゆるめストレッチ」——筋膜をじんわりほぐす
手順:
- 椅子に座ったまま、両手を頭の後ろで組みます
- 頭の重さだけを使って、ゆっくりと顎を胸に近づけるように頭を前に倒します(手で無理に押し込まないこと)
- 後頭部から首にかけてじんわり伸びる感覚を確認しながら、5秒キープします
- ゆっくり頭を戻します
- これを3〜5回繰り返します
「痛いくらい伸ばす」ではなく「じんわり気持ちいい」範囲にとどめてください。筋膜はゆっくりとした持続的な伸張に対して最もゆるみやすい特性があります。
毎日のちょっとした工夫で、頭痛を寄せ付けない体づくり
車から降りるたびに「胸を開く伸び」を10秒
駐車場に車を止めたら、降りてその場で両腕を大きくバンザイして胸を空に向けて開きます。たった10秒でも、運転中に縮こまっていた胸の前側の筋膜がゆるんで、首への累積的な負荷が和らぎます。
一日のうちで何度か車を乗り降りする機会があれば、そのたびに行うだけで積み重ねが出てきます。
こまめな水分補給が筋膜の潤いを保つ
筋膜はその多くが水分で構成されています。水分不足になると筋膜の潤いが失われて硬くなりやすく、トリガーポイントができやすくなります。
「信号待ちのたびに手元のボトルから一口飲む」といった小さな習慣が筋膜の状態を変えていきます。
就寝前のホットタオルで「明日の頭痛を予防する」
後頭部の下(首との境目あたり)にホットタオルを5〜10分当てることを就寝前の習慣にしてみてください。
後頭下筋群のトリガーポイントに温熱が届くことで、血流が改善されて筋膜の潤いが回復しやすくなります。翌朝の首と頭の状態が少しずつ変わってきます。
よくある質問(FAQ)
Q1:デスクワーク中に頭痛が起きたとき、マッサージ以外で気をつけることはありますか?
頭痛が出てきたとき、まず試してほしいのは「モニターから目を離して、遠くを1分間ぼんやり見る」ことです。目の筋肉(毛様体筋)の疲れが首・頭皮の筋膜の緊張に連動することがあります。
次に、胸椎リセット呼吸を3〜5回行って胸を開いてみてください。「仕事を続けながら頑張る」より「2分休んでケアする」方が、その後の集中力と頭痛の回復が早くなることが多いです。
Q2:車の運転中や信号待ちの間にできる、簡単な予防ケアはありますか?
信号待ちの間に、口からゆっくり長く息を吐くだけでも自律神経のバランスが整いやすくなります。
また、停車中に両手をハンドルから離して肘を後ろに引き、胸を前に突き出すように大きく息を吸う「胸開きケア」を2〜3回行うと、運転中に縮こまっていた胸の筋膜が少しゆるみます。走行中ではなく、停車中の安全な状態で行ってください。
Q3:長年、頭痛薬が手放せません。少しずつ薬に頼らない体になれるのでしょうか?
少しずつ変わっていく可能性はあります。ただ、月に10日以上鎮痛剤を使用している状態が続いている場合は、「薬物乱用頭痛」という状態に移行しているリスクがあります。薬を飲むほど頭痛が起きやすくなる悪循環です。
この状態が疑われる場合は、まず頭痛外来や内科に相談することをお勧めします。セルフケアと並行して「薬を飲む前に風池を押してみる」「飲むタイミングを10分だけ遅らせて様子を見る」という小さな工夫から始めると、少しずつ変化が出てくることがあります。
おわりに:頭痛薬の前に、首と肩の筋膜をじんわりゆるめる習慣をつくる
頭痛の多くは、首・肩の筋膜の硬さとトリガーポイントが引き金になっています。風池・百会・合谷のツボと、胸椎リセット呼吸を組み合わせることで、薬に頼る前に頭痛を和らげる選択肢が増えてきます。
頭痛の根本的なケアや種類の見分け方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→【内部リンク:頭痛は整体で治る?3つの種類と自律神経から整える根本ケア】
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
【著者紹介】

後藤雄一郎 (あじよし整体院 院長)
整形外科クリニックにて12年間、リハビリテーション業務に従事。数多くの患者様の痛みや不調と最前線で向き合う中で、西洋医学による正確な診断の重要性と、それと並行して行う「日常的な身体のケア」の不可欠さを痛感する。
その後、愛知県の春日井・勝川エリアにて「あじよし整体院」を開院。地域の皆様が抱える漠然とした不安に寄り添い、解剖学や運動学といった医学的知見に基づいた、分かりやすく再発予防のサポートを行っている。病院での臨床経験を活かし、医療機関との適切な連携も視野に入れた、安全で安心できる施術を信条としている。













